夫も子供も孫もいません。

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自慢の猫


先日女性ばかりの職場でボランティアをしている際、あるローカル女性と自己紹介を兼ねて「結婚もしていないし、子供も孫もいないのです。自分自分ってことに拘って生きてきました。」という話をした。すると翌週その女性が、他の女性が数人いるところで「この人はね、結婚もしてなくて、子供も孫もいないんだって」って大声で言い放った。別に隠したいことでも、恥ずかしいことでもないが、こういうことを本人に確認することもなく勝手に言うってのは、いかがなものか。しかも、彼女の声にはちょっと硬さがあって、妙に感じた。

 

その後、彼女がFBで友達リクエストしてきたのでオッケーしたら、彼女のポスティングがどんどん入ってきた。それらは孫と子供、家族との行楽写真オンパレード、孫自慢、家族自慢が主流だった。たぶん、幼馴染や親戚などに孫たちの近況を知らせる用途もあるのだと思うが、それにしてもかなりの数。彼女にとってたくさんの孫がいること、家族が誇りなんだということがよく分かる気がした。

 

この島に来てから知り合った同世代の女性のFBポスティングの多くは家族か旅行、食い物の写真と相場が決まっている。ということは、知人たちの家族アルバムを半ば強制的に見る羽目になっている訳で、会ったこともない人々の集合写真を見ている私は、何をやっているのかという気分になる。明らかに「いいね」を押して欲しそうな写真もあるので、お付き合いで「いいね」を押している自分にも呆れてくる。何をやっているんだ! 

私が見せびらかしたくなるのは飼い猫の写真ぐらいだから、落差は大きい。

それにしても前述の彼女、子供も孫もなく一人で生きている私をどうとらえていいのか分からなかったのかもしれない。それとも、やや批判的に女として半人前と感じたのだろうか。

 

ただ、同世代のFB友達でも家族写真を一切載せない人も多くいて、そういう人のポスティングは面白い。彼女彼たちの多くは絵描きや版画仲間で、共通の興味を持つ知人を持てた幸運を思う。FBをやっている人とやっていない人では、自分への満足度に大きな違いがあるとか、いうような調査結果やFB批判はある程度知っていて、納得、その通りだと思う。日本にいる旧友の殆どはFBをやっていないし、若い人はインスタグラムらしいということも聞いている。それやこれやを納得しても、前述の知人たちのポスティングが面白くてFBを続けている。

 

話を進めよう。私の住む町は日系の人が多いので、日本的ムラ社会体験をすることが多いような気がする。初対面の自己紹介が済み、どうでも良い会話の後、必ず聞かれるのが、旦那はいるの?子供は?孫は?の質問。いいえ、夫も子供も孫もいないんですよ、と返したところで多くの人は言葉に詰まる。この時のキョトンとした顔も皆同じだ。近年は両親も鬼籍に入っているので、家族の話題はゼロ。ますます話すことがない。あああ、、、困った、話題が見つからない、どうしようう、、、、なぜか私が気を使っているのが、奇妙だ。

 

一度ローカルの女性に空港まで車で送ってもらえないかと頼んだことがあって、その返答に驚いた。「構わないけど、どうして弟さんに頼まないの?」と聞いてきたのだ。言い遅れたが、同じ町に弟夫婦が住んでいる。親しくないし、付き合いもほとんどないので、できれば友達にライドを頼もうと思った訳だが、甘かった。家族がいるならまず家族同士が助け合うべき、それが彼女のルールなのかもしれない。彼女のルールは尊重するが、私にも生き方の選択がある。困った時はまず家族、という生き方はしてこなかった。なぜ、そうなったかについては、以前に書いたブログを読んで欲しい。

 

この町で直面するのも父権的家族制度の壁である。

家族と付き合わない、女が一人でいることが悪いことのように感じさせられる、そんな環境がある。女なら結婚をして、子を産み、孫に繋げる。かなり古めかしい価値観のように感じるかもしれないが、日本でもまだまだ王道の生き方ではないだろうか。この町に住んで、上記のような体験を続けてくると、自分は半人前扱いなのだろうと推察がつく。米国本土に住んでいた時に、こんな風に感じることがなかったので尚更だ。たぶん、単純に付き合う人たちが変わったというだけなのだろうが、同類を見つけるのはなかなか難しい街であることは確かだ。

 

日本でハワイは憧れのパラダイスということになっているようだが、旅行で来るのと生活するのとは大違いだと思う。それは日本も同じだろう。憧れの日本にアジアの国から技能実習生などで来た人の多くが、差別的扱いを受け、失望を抱えて日本を去っていく現実と同じ。日本は観光で行くにはサイコーなところかもしれないが、働きに行くようなところではない気がする。

 

米国本土からハワイに移転してきた人の75%以上が数年以内に、本土へ逆戻りという話を聞いたことがある。地元の人は本土から来た主に白人をハウリと呼んで区別する。私も白人ではないが、「本土から来ているからあなたもハウリだ」と言われたこともある。よそ者ってことなんだろう。観光で来て金を落としてくれるハウリなら大歓迎だろうが、地元に根付かれては困るという空気は鈍感な私でも感じる。この街の人口が増えず、30年以上前に来た頃とあまり街に変化がない、というのも当然なんだと思う。

 

ああ、ハワイ。温暖な気候や自然に恵まれたパラダイスだと思い、こんな素晴らしい土地に住める幸運に感謝する毎日だ。だが、一人で住み続けることの難しさも多い。そんな島に6年、火山の爆発とともに私という火山も小バクハツを続けている。